肩を外側から上げていく動作を外転といいます。
五十肩など、肩が上げづらい時は、前方から上げる動作は比較的にやりやすいのですが、外側から上げるのが困難になります。
肩の外転には3段階のステップがあります。これがすべてクリアーされると垂直挙上が可能になります。
第1段階、肩関節で上げる0〜60度
はじめの第1段階は、肩甲骨の動きはなく、肩関節だけの外転。
まず棘上筋と三角筋の作用によって肩が上がってきます。
肩こりがひどい人や、運動不足で肩をあまり動かさない人は、棘上筋が硬くなっていることが多く、肩を上げる最初のステップですでに、痛みがあったり、動きが鈍くなっていることがあります。
関節は動かしていないと、硬くなるものですから、運動嫌いでも、たまには体操をして、関節を動かしておいたほうがいいです。
第2段階、肩甲骨で上げる 60〜150度
第2段階は肩甲骨が動いてきます。
肩甲骨がスムーズに動くには、動かす筋肉にコリや疲労がないことと、その動きに拮抗する筋肉の緊張がないことです。
肩を上げるには肩甲骨を上方回旋させていきます、動力となる筋肉は、僧帽筋と前鋸筋です。
僧帽筋はいうまでもなく、肩こりなどでコリや疲労が溜まっていることがほとんどで、前鋸筋も普段から体を動かしていないと硬くなっていることが多い、その場合は僧帽筋と前鋸筋の調子を整えることが必要です。
肩を外転する時に拮抗するのが、肩を内転する、広背筋と大胸筋です。
この二つの筋肉も、だいたい疲れが溜まって硬くなっているので、それをほぐしておくと、肩の外転を邪魔しなくなるので、スムーズに肩が上がってきます。
第3段階、体全体を使って上げる 150〜180度
第3段階は、体幹の側屈の動きが入ります。
150度ぐらいまでは、肩関節と肩甲骨の動きで上がりますが、それ以上は、反対側の脊柱筋が働き、体幹を側方に倒すことで、肩を垂直挙上することができます。
※両腕を垂直挙上するには、腰椎を前弯(反らす)する動きが入ってきます。
体幹を側方に倒すには、脊柱筋だけでなく、体の横側の筋肉も関係してきます。
つまり、肩を垂直挙上するには、全身の協調性と連動性が必要になってくるわけです。
まとめ
結局、肩を上げるには、肩と肩甲骨の問題だけでなく、全身の問題になってきます。
肩を垂直挙上するには、反対側の脊柱筋や、体の横側の筋肉が関係してきます。
これはアナトミートレインのバックラインやラテラルラインなので、肩が上がりにくい時に、肩以外の場所にアプローチしても、肩に影響を及ぼすことが可能だということです。
肩が上がりにく時は、全身の協調性と連動性の流れがどこかで途切れてしまっていると考えられるので、体全体を整えて力がスムーズに伝わるようにしていくことが理想ですね。
参考文献:カパンジー機能解剖学 医歯薬出版株式会社