腰痛、感覚の重要性
まっすぐ立って、お辞儀をしてみてください、体を前に倒しているのが分かりますよね。
当たり前ですよね、でもこの当たり前に体を前に倒しているのが分かるのは、感覚のおかげです。
体のいたるところにある感覚受容器が、体の状態をキャッチしているから、体が前に倒れているというのが分かります。
お辞儀をするというのは、割と大きな動きなので分かりやすいですが、
微妙な体の動きは分かりにくいものです。
例えば、イスに座ってゲームをやる時、初めは背筋を伸ばして座っていたはずなのに、ゲームに熱中していたら、前かがみの猫背になっていた、なんて時は、だんだんと体が前かがみになっていくのは意識できません。
ちょっとずつ微妙に変化していくと感覚として捉えにくいのです。
そして、そのまま猫背で長時間いると、その姿勢が体に定着してしまします。
腰の安定性でも、感覚がとても重要になってきます。
腰痛の方は、腰や骨盤周辺が固まっていることが多いです。
これを動くようにして、腰が安定するポジションでいられるようになれば、腰痛は楽になってくるはずです。
そのためには、腰周辺の感覚を磨いていくことです。
腰で感覚受容器がたくさん集まっている場所
痛い、ピリピリする、ジンジンするなどの感覚は、感覚受容器によって感じます。
ということは、感覚受容器がたくさん集まっているところにアプローチすれば、変化がでそうですね。
感覚受容器は、関節、靭帯、筋膜、骨膜などにあり、
腰周辺で、感覚受容器が集まっているところは、「多裂三角部」と呼ばれているところです。
図:医歯薬出版株式会社 Rene Cailliet著 腰痛症 より引用
ここは腰椎、仙骨、腸骨、で囲まれた部分で、腰の調子が悪いと痛みが発生しやすい場所です。
椎間関節や仙腸関節があり、腰方形筋や多裂筋といった腰痛と関係の深い筋肉が付着しており、靭帯の数も多いところです。それゆえに感覚受容器も密集しています。
腰が痛い時は、ここの感覚受容器が反応し中枢へ信号を送っているから痛いと感じます。
それならば、この多裂三角部を直接ほぐしてゆるめれば、腰は楽になりそうですね。
たしか楽になるでしょう。
でも、またすぐに元に戻りやすいです、なぜなら多裂三角部に負担がかかる要因が解消されていないからです。
腰痛の場合、いきなりこの多裂三角部に負担がかかるわけではなく、さまざまな要因が絡み合ってだんだんと多裂三角部に負担がかかるようになります。
その要因を一つづつ改善して行くことで、多裂三角部の負担が軽減し腰痛も楽になってきます。
多裂三角部に負担がかかる要因
・同じ姿勢で長時間いる事が多い
イスに座っている時間が長い、立ちっぱなしの時間が長い、とその姿勢を維持するために筋肉や関節は硬くなります。
腰にある多裂三角部も硬くなり、柔軟な動きが制限されるため負担がかかります。
・骨盤の動きのアンバランス
骨盤は前後の動き、左右の動き、ひねる動きと三次元の動きをしますが、筋肉やその他の関節の状況によって、骨盤の動き方がアンバランスになることがあり、それが多裂三角部に負担をかけることになります。
・上半身の硬さ
上半身、特に肩甲骨の動きが鈍くなっていると、一見関係ないように思われる骨盤にも影響があります。
上肢の土台である肩甲骨と、下肢の土台である骨盤には互いに影響し合っているので、肩甲骨の動きを改善すると多裂三角部もゆるむことがあります。
・腹筋の弱さ
腹横筋は、腰らお腹にかけてグルッと取り巻いている筋肉で、腹圧を高める重要な筋肉です。
この筋肉が弱いと腹圧が低下し、腰に負担がかかります。
・胃腸が調子わるい
お腹の調子が悪いと、腰も緊張するので、多裂三角部も緊張しやすい。
・膝や足首が痛いのをかばっている
膝に痛みがあったり、足が痛かったり、怪我をしている場合は、それをかばうために多裂三角部に影響が出る。
・精神的な要因
人は生きていく上でいろんな感情を抱きます、体の状態は精神の影響を受けます、ずっと辛い状態が続けば、体を硬くさせる要因になります。
・その他
上記に挙げた以外にも、多裂三角部に負担がかかる要因はあるでしょう、
人体の構造は複雑で、それに精神状態も関係してきますので、実際にはいろんな要因が複雑に絡み合っていることが多いです。
多裂三角部にアプローチして腰痛を改善する主な方法
・アナトミートレインからアプローチ
多裂三角部には、スーパーフィシャルバックライン、スパイラルライン、といったアナトミートレインが走っています。
アナトミートレインの考え方では多裂三角部のあたりは構造が変化する場所で、ここが固まっていると、ラインの流れが途切れ力の伝達が弱くなります。それで腰痛が出やすくなるので、アナトミートレインに沿って調整を加えていくと、力の伝達が回復し、腰の負担が減ってきます。
スーパーフィシャルバックライン
図::医学書院 アナトミー・トレイン 第3版 より引用
スパイラルライン
図::医学書院 アナトミー・トレイン 第3版 より引用
・操体法によるアプローチ
多裂三角部が硬くなっていると、そこでの感覚も鈍くなっています。
操体法は感覚を重要視します、体を動かして快と不快を確認して、快を感じる方向へ動かしていく事で感覚を賦活させていきます。
操法をやっていくと、だんだん感覚が磨かれてきて全身の歪みが整いやすくなります、その結果、感覚受容器が多く集まる多裂三角部の感覚も活性化してくると考えられます。
・トリガーポイントでアプローチ
多裂三角部には、多裂筋や腰方形筋など腰痛と関係の深い筋肉が付着しています、この筋肉にできたトリガーポイント(筋肉のコリのなかにある圧痛点)にアプローチすることで、痛みの軽減を期待できます。
腰痛がある方は、骨盤につく筋肉ハムストリングスや臀筋群、腸腰筋などにもトリガーポイントがる事が多いので、それを処理するとで骨盤が動きやすくなり多裂三角部の負担も減ってきます。
・ご自分でやるセルフエクササイズでアプローチ
多裂三角部が硬くなる要因は様々ですが、一番の要因は骨盤周辺が固くなり感覚が鈍くなってしまうことです。
ですから普段から骨盤をよく動かせる状態にして、感覚を磨いていく事が大事です。
そのためには、ご自分で体をケアするセルフエクササイズを行う必要があります。
主なセルフエクササイズの方法
・腹圧を高めるエクササイズ
イスに座り、ゆっくりと息を吐きながお腹を凹ませていきます。
お腹が凹んでくるのは腹横筋の働きによるもので、腹横筋がしっかりしてくると腹圧が高まり、腰が安定してきます。
1日5回ぐらいが目安です。
・ハムストリングスのストレッッチ
まっすぐに立ち、骨盤から曲がるように前屈していきます。ハムストリングスが気持ちよく伸びるのを感じていください。
前屈して腰が痛い方は無理して行わないでください。
・カカト突き出しエクササイズ
寝た状態で、左右のカカトを突き出していきます、この時に骨盤からカカトを押し出すようなイメージで行います。
左右のカカトを突き出して、「力が入りやすな」「気持ちいがいいな」「こっちの方がいい感じするな」という方のカカトを3回ぐらい、突き出していきます。
反対側はやらなくいいです、気持ちのいい方をやるだけで、歪みが整ってきます。
その他にも当院では、腰痛予防となるセルフエクササイズをお伝えしております。